エフロレッセンス(白華)に関する解説
Technical Information on Efflorescence

1. エフロレッセンス


エフロレッセンスとは、コンクリート中の可溶成分を含んだ溶液がコンクリート内部から表面に移動し、乾燥に伴って水分が蒸発することで、コンクリート表面に濃縮。これが空気中の炭酸ガスと統合することによって、コンクリート表面に沈着した『白色の物質』のことを言います。
エフロレッセンスの外観は白い花が咲いている様にも見えるので、『白華』や『白華現象』などとも呼ばれています。

エフロレッセンスの発生事例(参考写真)

エフロレッセンス発生事例_写真

2. エフロレッセンスの種類と形態


エフロレッセンスは、コンクリートの練混ぜ水によって発生する一次エフロと、 雨水や積雪後の雪解け水、および散水などにより外部からコンクリートに浸透した 水によって発生する二次エフロに大別されます。
また、コンクリート表面におけるエフロレッセンスの形態は様々で、塊状に固化しているもの、繊維状の結晶が成長して綿状にふわふわしたもの、粉をふいた様に付着したもの、色ムラとなって生じるものなどがあり、何れもコンクリートの美観を損ないます。

エフロレッセンスの例(参考写真)

エフロレッセンスの種類と形態_写真

3. エフロレッセンスの主成分


エフロレッセンスはセメント系材料の水和生成物のうち、最も溶解度が大きい水酸化カルシウム(Ca (OH)2が細孔溶液中に溶出し、水分と共にコンクリート表面に運ばれ、乾燥して析出したものです。その後、炭酸化反応によって水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素(CO2と反応して炭酸カルシウム(CaCO3に変化します。したがって、エフロレッセンスの主成分は炭酸カルシウムと言われています。

4. エフロレッセンスのメカニズム


1雨水や積雪後の雪解け水などにより、コンクリートの表層部が浸水します。

エフロレッセンスのメカニズム_イラスト01

2コンクリートの表層部を移動したり滞留している水が、コンクリート内部に浸透します。 この水にコンクリート中の水酸化カルシウム等を溶解します。

エフロレッセンスのメカニズム_イラスト02

3可溶成分(水酸化カルシウム等)を含んだ水がコンクリート内部から表面に移動し、蒸発して乾燥します。その際に、この水に含まれた可溶成分が空気中の炭酸ガスと反応し、不溶性の炭酸カルシウムとなってコンクリート表面に析出します。

エフロレッセンスのメカニズム_イラスト02

4コンクリート表面に析出した炭酸カルシウムが乾いて固着し、白くなります。これをエフロレッセンスと言い、コンクリートの美観が損なわれます。

エフロレッセンスのメカニズム_イラスト04

5. エフロレッセンスがコンクリートに及ぼす影響

エフロレッセンスの発生によってコンクリートの品質が阻害されることはありません。
また、当該現場の環境条件等によって時間に差異はありますが、エフロレッセンスは2~3ヶ月で自然に消えて無くなることが広く知られています。この理由は、以下の様に考えられています。
①雨水に含まれる炭酸により、エフロレッセンスが徐々に可溶性の重炭酸カルシウムに変化して溶解します。
②既に発生したエフロレッセンスによって、コンクリート中の毛細管が徐々に目詰まりしたり、コンクリート表面の空隙にゴミやダストなどが詰まることによって、エフロレッセンスが発生し難くなります。
③舗装材では、交通開放によって歩行者や自転車などが通行することで路面に摩擦が生じ、エフロが除去されることもあります。

6. エフロレッセンスのpH(水素イオン濃度)


打設直後のコンクリートのpHは12以上の強アルカリです。
これに対して、エフロレッセンスの主成分である炭酸カルシウムのpHは8.5~10程度です。

7. エフロレッセンスが発生しやすい環境条件


①低温・多湿・適度な風がある場合に発生し易い
・冬季で、雨上がりや積雪後の雪解け時などの環境条件下は、エフロレッセンスが最も発生し易い環境下にあります。
・コンクリート表面が常に湿潤状態にある場合や、乾燥する速度が極端に早い場合にはエフロレッセンスは発生し難いと言われています。
②日陰面で発生し易い
・日陰面(北面など)では、コンクリートの乾燥速度(内部乾燥・表面乾燥)と硬化速度との関係から、エフロレッセンスが発生し易い傾向にあると言えます。
・日射面(南面など)では、コンクリートの表面の乾燥速度が速く、可溶成分の拡散がこれに追いつかず、エフロレッセンスがコンクリートの内部に析出してしまうため、エフロレッセンスによる変状が顕在化しません。
③コンクリートが若材齢の場合に発生し易い
・若材齢のコンクリートでは、その組織がまだ緻密化されていないため、可溶成分が移動しやすいことから、可溶成分が自由にコンクリート表面に移行し、エフロレッセンスが発生し易くなります。
④その他
 ・エフロレッセンスの発生はコンクリートの品質(良否)には影響を及ぼしません。

8. エフロレッセンスの防止対策


[設計施工]
横断勾配の確保
・舗装表面で所定の横断勾配(2%程度)を確保して雨水を側溝に排水します。
・舗装各層(路床、路盤、敷砂)においても横断勾配を設けるなど、舗装体としての排水処理を適切に計画することが重要です。
不透水路盤(コンクリート路盤など)の処理
・コンクリート路盤の様に不透水の路盤では、舗装に浸透した雨水によって敷砂の含水比が高まり、エフロレッセンスが発生することが多い傾向にあります。この場合には、2 ~ 3 ㎡に1箇所程度の割合で不透水路盤に水抜き穴(直径10cm程度)を設けて、敷砂に浸透した水を円滑に排水させることが必要です。
・水抜き穴には砕石などを詰め、透水シートで表面を覆って、敷砂の流出防止を図ります。
地下水位が高い場合
・地下水位が高い場合は、地下排水を行って路床、路盤、敷砂の排水を行います。
・地下排水の方法には、フィルター材料と穴あき管からなる排水溝を路側や中央分離帯下部に設けたり、5 ~ 10cm 厚さの砂層(遮断層)を路床と路盤の間に設けます。

エフロレッセンスの防止対策_イラスト

[使用材料]
路盤材
・再生クラッシャーランを路盤材に使用する場合は、路盤の排水性が悪いと再生骨材に含まれる水酸化カルシウムが溶出してエフロレッセンスの原因となりますので、排水性にご注意願います。
敷砂
・敷砂にシルト分(微粒分※)が多いと排水性が低下し、エフロレッセンスが発生し易くなります。(※0.075mm ふるい通過分が5%以下の砂が望ましい)
・敷砂のシルト分はブロック舗装の不陸発生の原因にもなりますので、特に注意が必要です。
・再生砂を使用すると、再生砂に含まれる水酸化カルシウムが溶出してエフロエッセンスが発生しやすくなりますので、ご使用を避けて戴くことをお勧め致します。
空練りモルタル
・空練りモルタルを敷砂に用いると排水性能が低下して、エフロレッセンスの発生や不陸発生の原因となりますので、ご使用を避けて戴くことをお勧め致します。
保水性ブロック
・保水性ブロックは、ブロック内部に雨水を一時的に貯留させて、その蒸発散によって表面温度を低減させますので、エフロレッセンスが発生し易いブロックと言えます。
・保水性ブロックをご採用の場合には、保水性ブロックの特性と、エフロレッセンス発生の関係について、十分ご理解いただけるようお願い致します。

9. エフロレッセンスの除去方法


エフロレッセンスのうち、一次エフロは可溶成分であるために水で簡単に洗い流すことが出来ますが、二次エフロは難溶性の炭酸カルシウムが主成分であることから、塩酸などの酸で洗わなければ簡単に除去することは出来ません。
前述した様に、エフロレッセンスは2 ~ 3 ヶ月で自然に消えて無くなることが多いため、可能な限り経過を観察することが望ましいと言えますが、どうしても除去する必要がある場合には塩酸での洗浄が効果的です。
塩酸による洗浄の手順は右記に示すとおりですが、洗浄は高温の晴天時に行なうのが効果的です。例えば、冬季の低温時に洗浄しても、エフロレッセンスが再度発生する場合がありますのでご注意下さい。

エフロレッセンスの除去方法_線画

10. まとめ


現状のコンクリート技術では、エフロレッセンスの発生を完全に防止するのは困難なことから、前述した各種の方法を組み合わせてエフロレッセンスの発生を出来るだけ少なくすることが肝要と言えます。

【参考文献】
①ing vol.3 1999 年6 月 小野田OLB会:白華はなぜ起きるのか?
②小野田研究報告 第19 巻 第70 号 1967 年 斉藤鶴義、石井四郎:セメント製品の白華について
③建築技術 1993 年2 月 鹿毛中継:エフロレッセンスとつらら状物質
④セメント・コンクリート No.191 1963 年 竹本国博、高橋秀夫、東海林正、牧田弘志:セメント製品の白華発生に関する基礎的研究
⑤セメント・コンクリート No.281 1970 年 河野俊夫、石井四郎、神保和己:セメントモルタルの初期白華防止剤に関する研究
⑥セメント・コンクリート No.454 1984 年 西純二、後藤孝治、酒井武:エフロレッセンスの防止方法に関する二、三の実験
⑦第47 回セメント技術大会講演集 1993 年 桜井宏、鮎田耕一、岡田包儀、荒木敬大:コンクリートの白華発生の要因に関する研究
⑧月刊建築仕上技術 1994 年8 月号 小俣一夫:エフロレッセンス発生のメカニズムと対策
⑨月刊建築仕上技術 1994 年8 月号 湊谷一樹:浸透・反応型コンクリート保護剤によるエフロレッセンス防止技術